2022デジタルイラスト論I

はじめに

この記事は2022年CCSアドベントカレンダー【裏】12/24日分の記事です。また遅刻してやがるよコイツ(私)。すみませんでした。

adventar.org

昨日の記事はコチラ

bornbohrer.hatenablog.com

やっぱ曲作れるって羨ましいなあ……アルミサッキって何なんだ…??具体的には何の物体でできてるんだ…???

登場人物紹介

・Q字ネクタイ CCSと漫研の二足のわらじを履きつつTOEICなどなどほったらかして絵を描いてはYoutubeとスプラに明け暮れる人間の屑

 

開幕

メリークリスマス、Q字ネクタイです。

先日、CCS内で絵描きたちが大量発生していると伺いました。私だけじゃないんかと一瞬思いましたが漫研内でもイラストを中心にしたいという人間が22勢の多くを占めているとのことで、絵描きブームが起きてるなあと思わざるを得ませんでした…。

というわけで、私も他の人の参考になると幸いだと思ったのでメイキングを作ろうかと思ったのですが、第一に文才が無い。具体的には文が長い。

qnecktie.hatenablog.com

表の方に上げたこれを読んでいただけたらわかるはずです…ほんとなんでこんな長くなっちゃうんだろう…

第二に前駆者様がいらっしゃる。

kotaka-1008.hatenablog.com

これを見れば主線、バケツ塗り、影塗り、ハイライト、そして背景というデジタルイラストの基本の手順は大体わかってしまうのです。もう終わりです。

第三にタイムラプス撮ると多分iPadが落ちる。Proでも多分落ちる。まあこれはコミケポスターのサイズがA1とバカでかいから仕方ないのです。

最後に思想的に合わない。残念なことに私は絵をうまくするにはとにかく描くしかねえだろ主義なのだ!とにかく描け!バカ!

藤本タツキ 『ルックバック』11Pより この画像は正確にはWordで作られたトレス

まあタツキ先生もそう言ってるし仕方ないね。服のシワとか顔の描き方とか意識して練習しまくらないと身につかないことは実際多いと思われます

というわけで、今回私は、絵を描いているときに気をつけていることや、経験上こうしたらなんかいい感じになるよと言ったことを伝えたいと思います。 この記事の内容を頭の隅っこに置いて絵に興味を持っていただければ幸いです。

作業環境

使用しているのはiPad pro、Apple pencil第二世代、そして右手デバイスとしてテンキーを用いてます。私は左利きなので右手デバイスです。

左手デバイスとしてテンキーを使う時は、左上のクリスタマーク>ショートカットキー設定からショートカットキーを設定すればOKです。

使用ソフトはクリスタEXです。元はといえば漫画用ですがPROの時点で対称定規も同心円定規もあるのでイラストのみが目的ならPROでもOKでしょう。アニメなんてprocreateで今の所どうにかできるしEXなんてPC用買い切りがあれば十分かも知れません。

PROは年額版を買えば2800/12で月額233円です。まあまあ安いとはいえサブスクは塵も積もれば山となるものだしそもそもiPadAirの時点でバカクソ高いのでお財布と相談しましょう。

線画編

線画に関して言えることは一つです。線を細くしろ。

クオリティの高いカラーイラストを描きたいならめっちゃ細くしろ。

極端な例ですが、CCSポスターの線画を挙げさせていただきます。

PCやスマホなどの画面ではわかりづらいかも知れませんが、この通り、ものすごく細くしてあります。

限度もあるし、ある程度線の強弱もつけた方がいいのですが、これからバケツ塗りして描き込むにおいて、例え色トレスというものがあるにしても線画の存在感はほんのわずか程度に留めておいた方が明らかに良いです。その方が違和感が少なく済む上最後の調整も楽です。

しかし細い線画はめっっちゃ描くのに気を使います。描けば描くたびSAN値がゴリゴリ削れていく感覚です。こんなもの一発描きできる人間はこの世に居ないので線画及びラフ画は数回に分けて描きましょう。

左からラフ1、ラフ2、そして線画本番。本番で左右反転したのはマンネリを防ぐため

この通り人体の構造を描いたラフ1、人体を本格的に描き、簡易的に服と髪などを描いたラフ2、そして本番描きと数段階に分けて描いてます。不安なら間にもう一段階挟んでも良いくらいです。

ブラシはなんの変哲もないただアンチエイリアス(ぼかし)強めのGペンです。こんなもの普通のイラストソフトで使えばたちまちバケツ塗りで端っこ数ピクセルが塗れずに困ってしまいますがそこは名高きクリスタ。後述する領域拡縮という機能が解決してくれます。procreateだとこうは行きません。

バケツ塗り編

絵描きにおける最大の苦行です。早く影塗りてえ。

パーツごとにレイヤーを分けて線画を基準にバケツ塗りして後の塗りをやりやすくします。

バケツ塗りも万能ではなく、

・線画との境界線にたった数ピクセル空白があったりする

・線画部分が塗られてないことに後々悩まされる(線画を細くする理由がコレ)

・部品や色ごとにレイヤー分けした時の手間が軽く吐きそうになるほど

・わずかな線画の隙間から洩れて本来塗りたくない範囲もどうしても塗ってしまう(線画を細くした時に頻発するトラブル)

という不具合が生じてます。相変わらず煩わしい作業です。

とりあえずレイヤー分けに関してはほとんど同じ色を使いかつあまり近くにないパーツレイヤーは統合するようにしましょう。後々こんがらがるのでレイヤーごとにどこのパーツなのかの名前をちゃんと書くようにしておくと後々楽です。

しかしクリスタの本当の恐ろしさはここから、クリスタには『領域拡縮』に加え『囲って塗る』という強力な機能が存在します。これを使えば少なくとも空白に悩まされることは大きく減るでしょう。

前者は線画の内側より少し外側に半ば強制的に塗るという強力無比な機能です。しかしこの機能でも2つ目の『線画の中は塗れない』という事案を解決するには至りません。

親の顔より見た光景。悪夢。

また、強制的に塗るとはいえ、このような角っこの部分だけ塗れないという親の顔より見た光景は全く解消されません。この現象が原因で現在でも幾万人もの絵描きが不安の中原稿を進めているとのことです。

しかし後者の機能『囲い塗り』はそれを解決するためにあるかのような発想の勝利的機能となっております。

この囲い塗りは塗りつぶし機能でありながら投げ縄機能の延長線上にある複雑ながらも便利極まりない機能です。

そしてこの投げ縄で塗りたい部分を囲むと…

この通り、端まで綺麗に塗ることができました。

この機能もこの機能で、線画の下の余計なところまで塗ってしまうなどの弱点があり、それに悩まされることも多いですが、わざわざ修正する手間はそれなりに減ることから、新時代の塗り機能と呼ばれています。

本番塗り編

分けたレイヤーの上にクリッピングマスクレイヤーを作ってその上に塗るかレイヤーの透明度をロックして塗ります。ここからが絵描きの本番です。花場です。腕と個性の見せ所です。

ここでは、私が頻繁に使う塗り用ブラシを紹介しようと思います。

No.1 アンチエイリアス全開Gペン

またコイツです。しかし事実コイツを不透明度100のまま使って影を塗るだけでそれなりに形になります。そのままでは安っぽいけどメリハリが付くのです。ある程度薄い影に関しては後者3つに任せれば十分です。コイツは特別な状況下や技術が無ければ不透明度100のまま使うのみで良いでしょう。下手に使い分けるともっと安っぽくなって死にかねません。

No.2 やわ肌ブラシ

やわ肌ブラシ - CLIP STUDIO ASSETS

上のリンクより無料でダウンロードできます。

柔らかい印象を持たせたい時に使うブラシその1。めっちゃ便利。

髪の毛のハイライトに使用。

Gペンだけではカバーできそうにない色んな柔らかいものを描くのに非常に便利です。

特にGペンが比較的苦手とする光が当たった部位の描写で真価を発揮するようなイメージがあります。絵の具量と絵の具濃度、色伸びなどの調節できることが多く、同時に敷居も高いので実際に使いながら性質を学ぶと良いでしょう。

No.3 塗り&なじませ

2022年の私のイラストに大革命を起こした一筆。コレ(次点でやわ肌)が無ければGペンは安っぽいブラシのままで終わってしまいます。

このブラシが活躍するのは主に服の影などのGペンで描いた影の補佐。

まずGペンで描いて、その端っこをぼかすのが主な役割です。

左右の違いがわかるでしょうか?

今回はフリルの一部分のみですが、コレが全体となるとかなり響いてくるのです。

塗り、なじませブラシ自体その気になれば塗りにも慣れるので正直Gペンとこのブラシだけで描いていた時代があるくらいですが、風格あるものを描くためには結局ある程度全体が少しボケたやわ肌ブラシが要るという事実に気づいて今に至ります。これらを用いればテクスチャを用いたものや厚塗りでも無ければ大半の人物画を描くことができるでしょう。

No.4 改造スプラッシュ水彩ブラシ

新たな地平に向かうためのテクスチャブラシです。

世の中の絵のほとんどは近くで見ると描く人の癖やブラシの跡などの何かしらの粗、いわゆるアクが見えてしまいます。しかしそのアクを取り除くには膨大な時間、手間がかかるのでいちいちそれをやっていては血を吐きながら続ける悲しいマラソンとなってしまいます。我ら未熟な絵描きには限界がありますが、そこでテクスチャを含むブラシを適切に用いると、良い感じにそのアクを軽減してくれます。

このブラシはつい一昨日完成した新顔ですが今の所隠し味として使い勝手がかなり良いです。やわ肌ブラシとの相性が抜群です。

さて、ここまで紹介したブラシを膨大な時間を燃料に上手く使いこなせれば大半の絵描きに負けないカラーイラストが出来上がることでしょう。

使い勝手を知るためにどうすれば良いのかというと…やっぱとにかく描いて下さい。上手い人の模写でもカラースケッチでもなんでもとにかく描いて下さい。服の影の描き方も人の肌の描き方も残念ながら全て描かねば上手くなりません。

それはそれとして影の色の選び方にはちょっとしたコツがあります。それは影の色は原則として元の色から少し青黒くなったものを選ぶと自然な色合いになって上手くいくという物です。

描きかけでゴメン

例えばこちらの描きかけの絵、こちらは人物(戌亥とこ)に薄紫色の影がかかっているように見えますが、こちらは人物レイヤーの上にクリッピングした薄紫色のレイヤーが乗算で乗っかっている形です。

影のレイヤーは"主影"、光が当たっている想定の部位だけ消すことで逆に光を表現しています。乗算レイヤーはこのように複数の色を持つレイヤーに影を入れるのに非常に便利です。

しかし、ある程度慣れてきて、光の色、影の色まで細かくコントロールしたいと思うようになると、このような塗った後どのような色になるかわからない手法はいつかは使い勝手が悪いと感じるようになってきます。そんな時に役立つ考え方です。

一旦乗算レイヤーを非表示にして…

例えばこの髪の毛。それぞれの色をまとめてみるとこうなります。

このように、影の色ほど暗めな上青に近い色が使われる傾向にあります。

まあ私が描いてる絵なので傾向もへったくれも無いのですが、例外でも無い限りこの法則に従っておいて損はないと思います。これにより部位ごとに違う質の影を描くことができるようになります。

青色に近くなる理由としては黄色や橙色の太陽光(ここでは赤)に対してメリハリを付けたり、青空、日が暮れた後の夜の空などの環境光を表現していたりなどさまざまな理由が挙げられます。いずれにしろ影の色を青くするだけで絵は数段リアルに映ることでしょう。

しかし例外はちゃんとあります。例えば先ほどの絵では人の顔を赤い影で塗っていました。これは色温度的な問題で青い影にしてしまうとまるで生きた人の顔のように映らなくなってしまうという問題があります。

左は何か怪物みたいな雰囲気、右は風でも引いているような雰囲気になってしまいました。不気味さを演出するならこれでも良いかもしれませんがどちらにせよ大抵は赤色で影を塗ったほうがシチュエーションに合うでしょう。周囲のものが全て青めの影で塗られているとしても人の肌のみを赤めの影で塗ってもあまり違和感が無いケースが多いです。

背景やエフェクト

一瞬話が逸れますがちなみにCCSのポスターにはカラーラフがあります。カラーラフとは絵の方針を決めるために描くテキトーな絵です。テキトーな絵なはずですが私は筆が遅いのでこれを描くのにも6時間ぐらいかかります。

恐らくもっとテキトーに描いた方が良いのでしょう…。

まあ何が言いたいのかというと、この次点でどのようなポスターになるのかを背景まで伝えなければいけないのです。

そして完成品がこちら

誰だ君たちは!

はい、この通り、背景に関して教えられる身分に私はありません。

何もかも行き当たりばったりで描いてます。

この背景の赤色だって採用するきっかけはほんの偶然です。教えられる気がしません。私は本当にデザ科なのか???

とりあえず一言言えることとしては、このポスターは"Pinterest"というアプリでポスターデザインを検索したところ辿り着いたとあるデザインを構図や色を変えて利用しています。絵の描き方を調べたり服の資料を調べるのにも使えるこのアプリですが、アイデアを探すのにも便利です。絵のアイデアを探している人は日頃から覗いて気になるアイデアを保存しておくと便利でしょう。

あと、黒い部分には『ノイズ黒粗』という素材を利用しています。ただの黒と印刷時にどう違くなるのかを試す試験的導入です。

assets.clip-studio.com

一枚描くのにかかる時間

CCSポスターに関しては最低でも13時間ぐらい 下手したら20時間ぐらいかかっています。(ラフ含む)

…馬鹿なのか私は?

終わりに

というわけで、私がどのように絵を描いているのかでした。服のシワの描き方とか色々大事な部分が稚拙なものとなってしまいましたがここまで読んでくださりありがとうございました。というかこの時点で最低でも5700字弱はあるからこれ以上伸ばすわけにも行かないのです。

この記事が絵を描くときの参考になったら幸いです。絵に少しでも興味にもってくれたり、絵を描く人が増えてくれたらもっと幸いです。…いやコレを見て自分も絵を描き始めようと思う人間なんてこの世に居るのか…???

とはいえコミケ会場で自分が丹精込めて全力で描いた絵がこの世に顕現している様を見る快感は軽くえづくレベルです。まだ未熟な部分はありますが絵を鍛えて良かったと心から思いました。オススメです絵描き道。

ちなみに、次回で今年のアドカレは最終回だそうです。何の因果か表の方で私のブログの前日枠だからちょっと紹介した韓国旅行の人と同z…

~R18~だと!?

どういうことなの…???(隠しきれない期待の声)

 それでは皆さん、良いクリスマスを。私は危うく確保できたamiibo眺めながらクマスロブンブンしてきます。イイダ先生もヒメちゃんも一緒に確保できて本当によかった…

ホナ!カイサン!

 終

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  N H K

唐突にぶち込まれるSFが大好きな男によるSFっぽいもの布教

昨日のお方のブログ

本記事はCCS Advent Calendar 2022 - Adventarの7日目の記事です。

昨日は韓国旅行の記事でした。旅行に誘ってくれる人間が居るって良いなあホントに…青春だなあ…。

でもコロナ関連とかパスポートとか入国申請とか色々大変そうなのがひしひしと伝わってきました…

molybdenum-ijk.hatenablog.com

 

前置き

みなさんこんにちは、こんな内容裏でやった方が良かったと今更後悔しているネクタイです。

今回はコミケポスター絵のメイキング記事を作ろうとしたのですが今描きあがってるのがそれのカラーラフ程度しかできてないので急遽作品布教と洒落込むことになりました。まあよく考えたら私はCCSでは新人なので自己紹介として丁度いいように思えなくもないですね。R-18作品混じってるけどね。

だってしょうがないじゃん!課題のストレスで推しの絵師目当てで衝動買いしたものがあんなめっちゃ良いクトゥルフSF作品だと思わないじゃん!!!1時間半ぐらいで全実績解除しちゃうくらいの省ボリュームなのに終わった後放心しちゃったよ!!!!!

ちなみにその作品は折角なのでこのブログの最後の方で紹介させて頂くこととなります。なんで表の記事でR-18を拝まなくちゃならんのだと思う方もいらっしゃると思いますがお許しいただければ幸いです。

というわけで、タイトルにもある通り、SF作品…ではなくSF要素。の布教です。

現代のSFはバリエーションが多い

小説に留まらずゲーム、漫画などなど…デジタルツールの普及やプログラム知識の広まりなどによって創作物そのものが大幅に増えた結果、他の作品との差別化を図っているのか単にそういうのが好きな人間が多いのか現代では様々な作品で本筋に絡んだり絡まなかったりする程度のSF要素が含まれてます。

例えばFF4。なんかファンタジー世界観から急に宇宙船に乗って月へ行きます。

例えばワンピース。最初は中世の世界観をベースにした冒険ものだった(とはいえ今も基本は変わってない)のが今や"人造悪魔の実"とか"古代兵器"ですってよ。

例えばポケモン。DPの創造神設定からBWの古代文明設定、SMでは別の次元のどこか遠くの星からポケモン(なのかも厳密にはわからない何か)が呼び出されてしまいました。

例えばスプラトゥーンいや君は最初から結構強めのSFでしたね。

そんな具合にSF設定が呼び出されるものだから、今やScience Fictionという語源はどこへやら、科学用語がほとんどどこにも見られない無い作品でも宇宙人やら何がなんやらわからない機械やら天使やらが出てくるだけでSF作品と分類されることもある始末です。まあ藤子・F・不二雄大先生も『SF(すこし・ふしぎな)』という言葉を作ってたぐらいなのでこの緩い線分けが良いのでしょう。これでいいのだ。

さて、そんなSF要素、良いところは"すこしふしぎなもの"に対する人々のリアクションに尽きるでしょう。

『もしもこんな"すこしふしぎなもの"があったら皆はどんな風に動くだろうか』と想像を膨らませ、それをたまーに他人に絵や文章、時にはプログラムで苦労して伝えたり伝えられたりするのが私たちは大好きなのです。

"すこし"どころでは済まない何かだったり、想像の中で人類が滅んでしまったりすることもあるでしょうが、いずれにしろこれがSFの本質なのだと私は思います。

…前置きだけで1400文字強って嘘でしょ私。

というわけで、唐突にぶち込まれるSF要素が大好きな人間による作品布教です。割とガチ目なSFからSFとは言い難いものまで色々取り揃えております。クソ長いので休み休みでも読んで頂けると幸いです。

また、ここで取り扱う漫画、ゲームなどの作品は大半がネタバレの危険度が洒落にならない作品だらけなのでロクなレビューは期待しないで下さい。

買え。後悔はさせない。

あ、でもエログロ方面と金銭的問題で後悔させちゃうことはあると思うから注意してね…

1:メランコリア(全二巻、上下形式)

漫画のショートショートの名手こと道満晴明先生による数十日後に隕石によって世界が滅ぶ地球の上で繰り広げられるまあほとんど12Pの短編漫画集です。

作風としては殺し屋によって殺される3人組の話や喋る猫と10年引きこもって生き延びた女の子の物語、好きな人の内臓を引っこ抜く(※なぜか抜かれても生きてます。)女子高生の日常などコミカルなものからどこか寂しいもの、血生臭いものから思いっきし下ネタなものまで非常にバリエーション豊かです。特に好きなのは臓器の話とゾンビと一緒にラノベを書き上げる話。下巻の話まで含むと葛飾北斎の子であるお栄ちゃんがゲッサンとウルジャンを読む話がぶっちぎりで大好きです。

一周してしまえば道満先生による読んだ後に唸らざるを得ない素晴らしい構成力とどこかカクカクしたかわいらしいデフォルメ絵から成るどこか寂しさを覚える世界観があなたを離さない事でしょう。下ネタが嫌いでなければ。

2:ファイアパンチ(全8巻)


突然ですが、あなたは千葉大のブックセンターでTOEICの勉強本か何かを探している最中、こんなものを目にしたことはないでしょうか?

これを書いたのは私です。そんな漫画です。

しかしこれだけだと流石に内容に欠けるので少し内容に触れると、"雪の女王"によって氷に閉ざされた世界の中で全身が消えない炎で燃える男「アグニ」が妹の仇を討つための旅に出る物語です。

"雪の女王"なんて聞くとなんか仇討ちというワードの割にファンタジーしてるなあと思う方も少なくないと思います。

しかしチェンソーマンを観たあなたなら肌でわかるかも知れません。あんなものを描くタツ『監督』が素直な雪の女王を描くわけがないという予感が。

大当たりです。

どこからともなくトガタというキャラが現れて好きな映画について布教し出します。

なんか聞き覚えに満ちた現実世界の映画が頻繁に聞こえます。

ここからがScience Fictionなんです。

全8巻とありますが、是非とも一気読みしていただきたい。

正直ネタバレを避けてレビューするのが辛いレベルで濃密な漫画です。

3:SANDLAND

みんな大好き鳥山明先生の1巻完結作品です。前2作と違って下ネタが皆無だから万人向け度が高い!けど知名度はそこまで高くないから布教したい!

なんというか表紙からして素晴らしいですね、鳥山明大先生の描くメカは最高です。

国王が水源を独占してしまったおかげで乾き切ってしまった大地を悪魔の王子ベルゼブブと伝説の元・軍人シバが駆け回り、隠された泉を探し回る作品です。

環境汚染だの気候変動だので人類が半壊状態というポストアポカリプスに近いタイプの作品ですが、「人間は大昔からずっと都合の悪いことが起こると魔物のせいにしてきた」「それを利用して胡散臭い国王がたった一つの水源をコントロール、水を高値で売り捌く」「隠蔽のためにメディアを賞金付きで利用する」など、鳥山明らしいユーモラスな世界観は健在なだけにリアルなそこはかとない闇が映えます。

ドラゴンボールで培われた戦闘描写も必見です。ベルゼブブマジでカッコ良すぎる。2000年の漫画やぞこれは。すげえ。

…それにしても前二作と違ってSF要素が本筋との関わり薄めだからある程度のネタバレが許されるのほんと助かる…。

4:ザ・ドラえもんズスペシャル(全12巻)

子供の頃に読んだっきりの思い出の作品。

先述した通り、私は藤子・F・不二雄先生の作品が大好きです。

(漫研に入って不二雄先生大好きと抜かしておきながらドラえもん大長編ですらコンプリートできてないけど)大好きです。

しかし正直思い出補正で言えばこれの方も好きかなあ!!

というわけでこれ読んでる人の3~4割ぐらいしか知らないかも知れないドラえもん黒歴史?否。公式が勝手に封じ込めた歴史です。

銃(空気砲)を巧みに使う高所恐怖症、ドラ・ザ・キッド

礼儀を重んじる超優等生な代わりに女に対する耐性皆無、王ドラ

昼寝大好きだがナイスガイ、王ドラのライバル、エル・マタドーラ

月どころか丸いものを見るだけで凶暴化します。どら焼きも例外ではありません。ドラニコフ

頭サッカー野郎、コイツがロボットだとは到底信じ難いドラリーニョ

怒ると巨大化する最終兵器、ドラメッドIII世

…彼らと比べると没個性。でも活躍回がちゃんと用意されてるのほんと大好き。ドラえもん

彼らが世界各地でホントに突拍子も無い大冒険を繰り広げる、それがドラえもんズ。

"ネコ型ロボット要素どこ行った"

"のび太たちまで含めたらこんなたくさんの個性の塊みたいなキャラクターを扱い切れるわけがないだろう"

という声がどこからか聞こえる気がしますが、

シナリオ担当の宮崎まさる先生が本っっっっ当にやり手。

タイムスリップ、ひみつ道具、22世紀の不良品ゲームなどなど、様々な観点で彼らにスポットを当ててくれます。

今では名を聞かなくなってしまった彼らですが、三谷先生のまるで本物の不二雄先生のような作画も相まって子ども向けの漫画として凄まじいクオリティを持っており、クソガキ時代の私でも感激しておりました。大人となってしまった私たちにも通じるレベルでしょう。

今では絶版してしまいましたが恐らく電子書籍で売られ…

…あれ、おかしいな…

…え?電子書籍でまだ出回ってないの?

は??中古全巻セットで34000円ぐらい??

5:星のカービィディスカバリー

本来ならロボボプラネットを薦める予定でしたがあちらはスーパーデラックス(もしくはウルトラスーパーデラックス)からカービィWii、そしてようやく(できればトリプルデラックスもやって欲しいけど)ロボボプラネットという結構高めの要求をしなければいけないため渋々こちらにしました。熊崎カービィ最高。

 

そんでもってこの作品。ゲーム初心者にも楽しめるという歴代のコンセプト通り基本的に頭空っぽで楽しめるのもそうなのですが(その時点でめっちゃ凄いと思う)

背景が、マジで凄い。

人類らしきものが居なくなった後の世界(死に絶えたわけでもないのか骨一つ残っていない)として、ビル群、商店街、遊園地、西洋風の巨大な時計塔などなど、見覚えのあるものばかりが目に映る、言ってしまえば廃墟な訳ですが、全体的な雰囲気としては全然怖さが無いのですよ。

廃墟なのにどこか幸福さを感じる。それでいて質感がリアル。廃墟であるという現実から逃げてない。

このアンバランスさ、世界観。未熟ながらも絵を描いている身分からしたら本当に不思議で仕方がありません。

最終盤で明かされる人類の末路(?)も含め、この世界の住民がどんな暮らしをしていたのか想像せずにはいられない作りには感服です。

…最も、その最終盤こそが本番な訳ですが。

6:HaikaraWalker(Splatoon2資料集)

はい。前述した通り最初からガチSFだったやつです。

深海メトロの車内にあった雑誌の名を借りた資料集ではありません。

逆です。

オクトエキスパンション、タタキケンサキのギアまで含めたSplatoon2の資料集の名を借りたイカ世界の雑誌です。

コイツには魂が篭ってます。

だってページ開いて最初に目に飛び込むのがゲーム内架空企業の広告ですぜ?

後の方のページにも、ファッション雑誌っぽく纏められたギア紹介コーナーや、

ゲーム内のグラフィックをデザインした海女美術大生のアーティストことSallyとハラ ワタル御大によるインタビュー記事まで掲載されている程の豪華内容です。
…勘のいい方ならわかると思いますが、Sallyもハラワタルもイカ世界の住民であり私たちの住む人間世界には居ません。

しかしインタビュー記事はめっちゃしっかり文が練られてます。

雑誌じゃん。もうこれ『向こうの世界の産物』じゃん。

これを最初に読んだ時は声すら出ませんでした。目が離れませんでした。ただただ憧れるばかりでした。人生で一番好きな本が小説でもなく漫画でもなくゲームの資料集になるとは思ってもみなかったです。

SF作品はこの世に広く存在しており、衣食住から作中人物の暮らしを詳しく掘り下げている作品は多くありますが、サブカルチャーからここまで深く掘り下げる作品はスプラトゥーン以外に見たことが全くありません。

この世でこれほど深く作中世界について考えられて作られた作品が他に存在するのでしょうか?

7:HELLO HELLO WORLD!& NOIR NOAH(PCフリゲ&DLciteゲーム)

最後のトリは、唐突に同人ゲーとなります。NOIR:NOAHです。記事冒頭の発狂大文字の元凶です。

この記事はこのゲームを布教するためのものと言っても過言ではありません。

だって知名度低すぎるんだもん。

www.dlsite.com

※リンクはR-15版 こっちの方が安い

大好きなイラストレーターであるめとこ大先生(https://twitter.com/metro04)によるバチバチにR-18な作品ですが、不覚にもめとこ大先生がゲームまで作っていらっしゃった事を今回で初めて知りました。

相変わらずな絵のオシャレさと単純に大好きなイラストレーターがこんなところにゲームを作ってるという興味に惹かれてつい手に取ってしまった(?)ところエロ要素はあるもののその実態はR-18にしてでもSAN値を容赦無くゴリゴリ削りにくるストーリー、全ての実績を解除するまでの1時間40分(個人差あり)の間に詰め込まれた大量のCGなど、とにかく悍ましく、なおどこかに感動するものを覚えさせられる作品でした。

この方は以前にもHELLO HELLO WORLD!なるゲームを作っていたようで、いずれ近い内に履修しておかねばなるまいなと思っております。

HELLO, HELLO WORLD! - 冥途のみやげ

このクオリティをあんな少人数で作り上げられるものだから勇気を貰ってしまいました。

最後に

以上です。長々とした記事にお付き合い頂きお疲れ様でした。できればエリア51(漫画)やチェンソーマン、ジョジョ、最近だとポケモンSVなど、紹介したいSF要素は山ほどありますが(特にエリア51は人は選ぶけどオススメ)、流石に時間がえげつない程削られたのでここで打ち止めさせていただきます。てかこれ以上長々と続けても読む人絶対いないでしょう…さすがに居ないよね?

最後に、何故SF作品紹介という体でこれらを紹介したのかと言うと、ここで紹介した作品は全て、登場人物や作中世界に対する弛まぬ愛を感じる作品でした。私が本当に好きなのはSF作品ではなく、そうした作品を好むようになった結果、自然とSF要素が入った作品を好きになるようになってしまったのかも知れません。

私は、魂を削って作られた作品が大好きです。いずれ私も、もっともっとそういう作品を作れるようになりたいなと思っております。

綺麗事に過ぎませんが、作り切った彼らを見ると憧れが止まらないのですよ。

…合計6100字以上ってマジ?

こんな長丁場をここまで読んで下さり本当に、本当に、ありがとうございました。

※カラーラフです。

コミケポスター頑張ります。